トランプが大統領に選ばれるためにとった戦略とは 「新・リーダー論 池上彰・佐藤優」
my本棚74冊目はつい先日発売されたインテリジェンスの雄、池上・佐藤の対談本第3弾です。
(第1、2弾のレビューはこちら)
「新・戦争論 池上彰・佐藤優」を読んで歴史と国際情勢を学ぼう
今回のテーマは「リーダー」。人は誰しも自分を導いてくれるリーダーを必要としますが、辺りを見渡してもそういった人物はなかなか現れません。
世界各国のリーダーを見ると、中国の習近平やロシアのプーチン、北朝鮮の金正恩など、力を持っているけれども危険な人物が目立ちます。
そこへきてついにアメリカではトランプが大統領選に勝利しました。今回の本はまだ勝利より前の段階ですが、両氏による詳しい分析がなされています。
前の対談本2冊は世界史に重点を置いた構成となっていましたが、3冊目のこの本はイギリスのEU離脱やパナマ文書、ピケティ、オバマ広島訪問など、この1年あたりに起こった話が多くなっています。
ここ最近の時事ネタ、国際情勢を把握するのにうってつけだと思います!
やはり今回の本で注目したのは、大統領選で番狂わせを起こしたトランプについてです。対談当時はまだ選挙前ですが、両氏ともトランプの動向を注視している様子がうかがえます。
中でもトランプのメディア戦略が目を引きました。
佐藤 トランプのパーソナリティに話を戻しますと、言動は、一見、乱暴なようでいて、周到に計算されている面がありますね。
池上 「不法移民を送り返せ」と言っているのであって、「移民を送り返せ」とは言っていない。(略)
いずれにせよ、トランプの戦略は、いわば「炎上商法」です。わざとスキャンダラスな、メディアが飛びつくような発言をして注目を浴びる。そして視聴率が取れるから、メディアも便乗します。
トランプは過激な発言をすることでメディアに宣伝してもらえ、メディアも視聴率を取ることができる。win-winの関係を築いています。
実際、選挙に勝利した後はその戦略をとる必要性がなくなったのか、過激な発言は鳴りを潜めています。そのため、勝利直後急激に下がった株価も、急激に回復・上昇しています。
その他私が気になったのは、日本の核保有について。オバマの広島訪問の話から、核についての問題について触れられています。
日本には原発があり、核を作る「能力」はあるが、作る「意志」はないというスタンスをとっているようです。ただ、抑止力のために「能力」は保持しなければならず、原発をなくすことはできないということになります。
一方で、核兵器不拡散条約があるため、他国からウランやプルトニウムが供給されるのは、核開発をしないことが条件になっているのだとか。つまり、諸外国は日本に原発の使用を許可する代わりとして、核武装を阻止しているという構造になっています。
こうなると、「戦争を起こしたくないなら、原発を動かさないといけない」という話になります。なので、「戦争反対」と「脱原発」という考えは共存できないのではと思いました。
それ以前に、例え核兵器を作ってもそれを設置する場所がないといった問題もあるようなので、核武装への道そのものが困難なようですね。
…そんなこんなで、リーダーの不在が叫ばれて久しいですが、少なくとも優れたリーダーになるには教養が必要だと池上さんは述べています。教養を身につけるには、読書が不可欠です。池上さんや佐藤さんの本を読んで、教養を身につけていきましょう。
kindle版もあります!