備忘録的 本棚ブログ

読んだ本の感想や書評を備忘録的に書いていきます。本棚の様に積み上げていくつもりです。

賢者は歴史に学ぶ「大世界史 池上彰・佐藤優」

大世界史 現代を生きぬく最強の教科書 (文春新書)

 

my本棚71冊目は池上・佐藤の最強タッグによる対談本の第2弾です。
第1弾である「新・戦争論」については先日記事にしましたが、今回の本も勉強になりました。

「新・戦争論」はどちらかと言えば現代の世界情勢に重きが置かれていましたが、今回の「大世界史」は、現代の情勢をより深く知るために世界史を重視しています。

 

いわゆる歴史の勉強というと、私もそうでしたが、試験前に人物や出来事の名前と年号を必死に覚えてテストで吐き出すという暗記勝負で、学ぶ意味を感じられなかったり、歴史嫌いになってしまった方も多いのではないでしょうか。

暗記も脳を鍛えるという点では無意味ではないでしょうが、それだけのために歴史を学ぶのはあまりにも不毛ですよね。しかし、この本を読めば、歴史を学ぶことの意味を知ることができると思います。

 

「歴史を学ぶ」だけでなく、「歴史に学ぶ」のです。

池上さんが本の最後の方で主張しているこの一言が、歴史を学ぶ意味としての結論なのではないでしょうか。自分ひとりではおよそ経験できないことを歴史は教えてくれます。

歴史を知ることは、それを代理経験できるということ。経験しておけば、同じようなことが起きても適切に対処できます。

 

しかも、いま世界は大きな時代の転換期を迎えています。あちこちで既存の秩序が揺れ動いて、先行きが見通しにくくなっています。こういう混迷する時代だからこそ、いっそう歴史を学ぶ必要があります。現在の世界を読み解くための唯一の手掛かりは、歴史だからです。

 佐藤さんもこう主張しています。過去を知ることは現在を知ることであり、さらには未来を知るための唯一の手段とさえ言えるかも知れません。

 

さて、その歴史を知るために書かれた「大世界史」には、大きく分けると以下の事柄について解説されています。

・中東の成り立ち、オスマン帝国とは
・現代中国と明王朝
ギリシャの成り立ちとドイツ
・アメリカvsロシア

そして世界史と銘を打ちつつも、沖縄の問題や日本教育についても語られています。
佐藤さんは母親が沖縄出身ということもあり、「沖縄人」という「日本人」とは違ったアイデンティティについての理解も深いのです。

特に安保法案と沖縄基地問題のジレンマについては、私はあまりにも無知でしたが、考えさせられるところがありました。

池上さんが語る、翁長雄志沖縄県知事の言説を引用します。

「東京などで講演すると、私たちが米軍普天間飛行場辺野古移設に反対しているから、『日米安保に反対なのか』と聞かれることが多い。はじめのうちは『そうではない』と説明していたのだが、最近は『あなたは自宅近くに米軍基地ができるとしたら、受け入れますか』と、逆に質問することにしている。たいていは『受け入れない』という答えだ。そこで私が『では、あなたは日米安保に反対なのですか』と聞くと、相手は黙ってしまう」(『朝日新聞』2015年8月30日)

 つまり、日米安保に賛成するのなら、基地の負担を沖縄だけに背負わせないでくれということです。

本の中にも書かれていますが、クリミア半島がロシアに併合されたり、スコットランドがイギリスから独立しようとしたりするのと同様に、沖縄も日本から独立することだってあり得ない話ではないのかも知れません。私たちはそういう歴史の中に今生きていることを自覚する必要があるのではないでしょうか。

 

本当に、両氏の深い知識には驚嘆させられます。この本を世界史を学ぶためのきっかけとしてみてください。 

 第3段も最近出たようですね!近いうちに読んでみます!