備忘録的 本棚ブログ

読んだ本の感想や書評を備忘録的に書いていきます。本棚の様に積み上げていくつもりです。

一人ひとりが権力を手にする時代とは 「第五の権力 Googleには見えている未来」

第五の権力---Googleには見えている未来

 

my本棚84冊目はGoogleの会長エリック・シュミットと、GoogleシンクタンクGoogle Ideas創設者兼ディレクターで2013年には“世界で最も影響力がある100人”にも選ばれているジャレッド・コーエンによる共著です。

 

タイトルの第五の権力は、立法、司法、行政のいわゆる三権、政府を監視する報道機関の第四の権力に次ぐもので、世界中の人々がオンラインで繋がったときに手にする新しい権力のことを指しています。

そんなパワーを自分も手にしつつあるなんてびっくりしますが、確かに今更説明する必要もない位、インターネットは水や電気といったインフラと同様、欠かせない存在になっています。

今はまだ先進国でしか普及していないかもしれませんが、2025年には世界人口80億人のほとんどがオンラインで繋がると予想されています。

 

仮想世界と現実世界のはざまで我々はどう生きるのか、国家や政治はどう変わっていくのか、戦争やテロはなくなるのか、二人の天才が予想する未来が書かれています。刺激的な一冊です。

 

まずは、この先技術が進歩していくことで予想される未来の生活がどんなものか、著者の二人が紹介してくれます。

テクノロジーの進歩により効率的な生活が送れるようになるとのことですが、例えば衣類を洗濯→乾燥→たたみ→アイロンがけまでこなすマシンが現れ、さらにはその日の予定に合わせて服装をコーディネートまでしてくれるシステムが構築されると見られています。

ロボット工学、人工知能音声認識といった分野で、技術進歩が実現するうちに、私たちは日々の生活で、よりスムーズに技術を使いこなし、毎日を効率よく過ごせるようになる。高度な人工知能を搭載した完全自動のヒト型ロボットは、当面は普通の人には高くて手が届かない。だが近いうちに、アメリカの一般家庭でも数台の多目的ロボットをもてるようになるだろう。

想像はできても、本当にそんな未来が来るのか信じられないというのが正直なところですが、ワクワクしてしまいますね。そのほかにも途上国の教育が充実したり、医療が発展したりと様々なメリットがあります。

 

一方で、個人情報の扱いはさらに慎重になる必要がありそうです。80億人に向けて自分の情報を公開しているわけで、オンライン空間でのプライバシーを守るための知識が必須です。そういった教育が重要になってくるほか、セキュリティの強化も必要です。

プライベートなコンテンツが何かの手違いで、もしくは犯罪がらみでいきなり流出し、世間に広まるリスクは、常に存在する。私たちは過去現在を問わず、オンラインで知り合った全ての人の不始末に対して、責任を問われるおそれがある。一般にオンラインの人脈は、現実世界の人脈よりも広く分散しているため、リスクは高まる一方だ。知人の行動は悪行も善行もすべて自分に跳ね返ってくる。私たちの世代が、消し去ることのできない記録を持つ「人類最初の世代」になる。

しかも、プライバシーとセキュリティに対する考え方は、国家や政府の体制によっても変化してくるようです。

民主主義社会派オンラインの集合知に(良くも悪くも)ますます影響されるようになり、貧しい独裁国家は仮想世界に支配力を広げるために必要な資源を手に入れようと奮闘し、富裕な独裁国家は市民生活の掌握を強めるために、最先端の警察国家を構築しようとする。このような変化は、確かに新しい行動や進歩的な法律を促すきっかけになるが、関係する技術がきわめて高度であることを考えると、現在市民の安心のよりどころになっている保護の多くが、今後は失われる公算が高い。国民、民間企業、国家が将来の難題にどのように立ち向かうかは、それぞれが置かれた社会の規範や法律枠組み、国民性によっておおかた決まるだろう。

 

…といった感じで、未来への展望が詳しく書かれています。かなりのボリュームなので、読むだけでも一苦労なのですが、上に挙げた様なプライバシーへの懸念はあるものの、戦争やテロに関しては抑制的な方向へ進むと予想されていますから、より平和な世界が待っているのではないでしょうか。

 

第五の権力---Googleには見えている未来

第五の権力---Googleには見えている未来