【108冊目】これ一冊で最先端の知見が得られる「人類の未来 吉成真由美」
my本棚108冊目はサイエンスライターの吉成真由美さんによる世界屈指の知識人のインタビュー本です。
以前にも当ブログで吉成さんの「知の逆転」を紹介しましたが、今回の本は氏のインタビュー本の第三弾ということになります。
(余談ですが…3年前に書いた自分のブログを読んでみると、記事の質も量も大したことなくて恥ずかしいですね。自分が成長していることの裏返しという意味では嬉しくもありますが。)
今回の本では各分野の泰斗であるインタビュイーの方々に、AIや経済、民主主義、気候変動など、科学から政治のことまで幅広く取材したことがまとめられています。
その中で、インタビュイーにより意見は必ずしも一致していません。ただ、それゆえ今後の未来を見通す事がいかに難しいかを感じさせられます。未来のことがいつも気になっている私としては、大変勉強になる1冊でした。
この本のタイトルでもある「人類の未来」については大いに気になっていたので読んでみたわけですが、知の巨人たちの間でも意見は分かれている様です。
「シンギュラリティ」という言葉を広め、人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイルは、テクノロジーは1、2、3…と線形的に進歩するのではなく、1、2、4、8…と指数関数的に進歩していくと主張しています。
それによりAIは、今はまだ人間にかなわない分野でも、爆発的な進歩により人間を追い抜いてしまう可能性があると語っています。(←2045年にはコンピュータが人間の知能を凌駕するというのがシンギュラリティです)
そういったテクノロジーの進歩により、エネルギー問題が解決したり、寿命が飛躍的に伸びたりといった恩恵を受けられるようになると語られています。
一方で、「知の逆転」の方でもインタビュイーだった、数学者で言語学者、政治学者でもあるノーム・チョムスキーはシンギュラリティを否定しています。
AIは膨大なデータを処理して生産性を上げることはできるけれども、人間のような知性や創造性を持つことはないだろうと主張しています。
ただ個人的には、カーツワイルの主張を支持しています。一般的な予想よりも早くコンピュータが碁でもプロの人間に勝ってしまったように、やはりテクノロジーは指数関数的に、恐ろしいスピードで進化しています。翻訳などもすでに実用レベルになってきていて言語の習得に意味があるのか疑問が出てきていますし、何よりコンピュータが人間を超えた先に何が待っているのかを知りたい自分がいます。
いずれにせよ、今後も技術の発展により生活は激変し、経済や政治にも影響を与えることは疑いようがないのではと思います。この恐るべきスピードの変化に慌てないように、ぜひこの本を多くの人に読んでいただきたいなと思います。
人類の未来―AI、経済、民主主義 (NHK出版新書 513)
- 作者: ノーム・チョムスキー,レイ・カーツワイル,マーティン・ウルフ,ビャルケ・インゲルス,フリーマン・ダイソン,吉成真由美
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2017/04/11
- メディア: 新書
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- 作者: ノーム・チョムスキー,レイ・カーツワイル,マーティン・ウルフ,ビャルケ・インゲルス,フリーマン・ダイソン
- 出版社/メーカー: NHK出版
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