備忘録的 本棚ブログ

読んだ本の感想や書評を備忘録的に書いていきます。本棚の様に積み上げていくつもりです。

【107冊目】騎士団長殺しを読んだなら「みみずくは黄昏に飛びたつ 川上未映子・村上春樹」も読んでおこう

みみずくは黄昏に飛びたつ

 

my本棚107冊目は作家の川上未映子さんによる村上春樹さんのインタビュー本です。7年ぶりの長編小説となる騎士団長殺しが出版されたばかりですが、それを中心とした村上春樹さんの思いや言葉が綴られています。

このインタビューには騎士団長殺しの内容もたくさん出てくるので、まだ読んでいないという方は注意が必要です。ただ、例え読んでいなかったとしても、村上さんの考えや主張を深い所まで知ることができますから、川上さんのことは好きだけど村上春樹は読んでこなかったという人にもおすすめですよ。

 

このインタビュー集は4章構成となっています。1章は「職業としての小説家」の刊行を記念して2015年に文芸誌「MONKEY」に掲載されたもの、2~4章は騎士団長殺しをうけて3日間に渡ったインタビューをまとめたものです。

「職業としての小説家 村上春樹」を読んだらランニングが捗るよ

 

恥ずかしながら川上未映子さんのことはお名前を知っていた程度で、著作などを読んだことはなかったのですが(今度ぜひ読んでみます!)、村上春樹さんのことをある意味本人よりも詳しく、作家として尊敬しているのはもちろんのこと、ひとりの熱心なファンであることがひしひしと伝わってきました。

そんな川上さんがインタビューに備えて色々と準備を行なったそうですが、ほとんど役に立たなかったと最後に発言していたのが印象的でした。いい意味で期待を裏切られたのではないでしょうか。それだけ村上春樹という作家は常識はずれの発想や小説の書き方をしているということだと思います。

 

そんなインタビューの中で私が感銘を受けたのは、村上春樹が文章を書く時の基本方針を語ったところです。

村上 もう一つは比喩のこと。チャンドラーの比喩で、「私にとって眠れない夜は、太った郵便配達人と同じくらい珍しい」というのがある。これは何度も言っていることだけど、もし「私にとって眠れない夜は稀である」だと、読者はとくに何も感じないですよね。<中略>とにかく読者が簡単に読み飛ばせるような文章を書いてはいけないと。

 村上春樹といえば比喩の巧みさがまずは語られるポイントだとは思いますが、やはりご本人もそこが基本にして大事なところだと考えておられるようです。「太った郵便配達人」という表現は聞けばなるほどと思うのと同時に、どうしたらそんな表現が思いつくのだろうと嘆息してしまいます。

私もブログを書く時は、何かひとつくらいは簡単に読み飛ばせないような文章を織り交ぜたいと思います!と、そんなやる気と勇気を与えてくれた本でもありました。 

みみずくは黄昏に飛びたつ

みみずくは黄昏に飛びたつ