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備忘録的 本棚ブログ

読んだ本の感想や書評を備忘録的に書いていきます。本棚の様に積み上げていくつもりです。

天皇陛下の譲位について気になったので「歴史のなかの天皇 吉田孝」を読んでみた

歴史のなかの天皇 (岩波新書)

 

my本棚96冊目は歴史学者青山学院大学名誉教授の吉田孝さんによる天皇家の歴史についての本です。

去年からですが、天皇陛下の生前譲位がニュースになっています。譲位の方法についても有識者が議論を交わしている所ではありますが、そもそも天皇とは一体何なのか?知りたくなってこの本を手に取りました。

著者の専攻は日本古代史とのことで、必ずしも天皇家や近代の歴史の専門家による書というわけではなかったようですが、それ故基本的なことが書かれているため、私の様な無学の者からすればちょうどよいレベルだったように思います。

 

 今回紹介する本はタイトルが「歴史のなかの天皇」となっている通り、ひたすら天皇家の歴史が書かれているというよりは、歴史を振り返る中で天皇家はどの様に歩んでいたかがわかるものになっています。

そのため、日本や朝鮮、中国の古代から近代の歴史が把握できると共に、各時代の天皇の動向を知ることができます。

 

まず、天皇という呼び方は7世紀頃に日本でも普及したものとされているようで、王を超越した存在という意味合いがあるようです。ですが、平安時代~江戸時代前半にかけては天皇という呼び方は少なくなり、天子や王といった言葉と区別があいまいになっていったのだそう。公式な文書で天皇という言葉に統一・規定されていったのは明治に入ってから~昭和初期の間ということで、割と最近のことなようです。

 

呼び名に関しても分かる通り、江戸時代までと明治以降で天皇のあり方が大きく変わっていった印象を受けました。

日本の歴史を激変させるきっかけは、欧米諸国のアジア侵略であった。この危機をどのようにして乗りきるか、幕末から明治の激動期に苦闘した指導者たちは、強力な国家体制をつくるために、天皇を西欧の君主と肩を並べることのできる、近代的な君主に変革する道をめざした。そのために「伝統」を再編する決意をする。まず前近代の天皇仏教と深く結びついていたのを、神仏分離を強行して仏教から切り離し、広義の神道と結びつけた。

 確かに現在の天皇家からは仏教的な要素は見られません。祭事も多く行なっている印象がありますが、これらも明治時代から行なわれるようになったのですね。

幕末に欧米諸国から押しつけられた不平等条約を、どのようにして改正するか――それが明治政府の大きな課題だった。そしてそのためにはまず、近代的な憲法と法体系を整備する必要があった。そこで西欧の王権にならって、天皇の地位・権限を成文法とする努力を始める。その成果が「大日本帝国憲法」と「皇室典範」であった。

現在、生前譲位に関して議論されているのは、皇室典範の規定をいかに変化させていくかということだと思われます。ここで皇位が「男系の男子」に限定されたほか、「養子」は否定され、「譲位」も認めない方針となったのです。国際的で近代的な法体系の創設を目指した結果、皇位継承者の順位も明文化されることとなりました。

その後ポツダム宣言の受諾後に憲法皇室典範も改正されますが、皇室典範に関しては天皇家の財産の処分が念頭に置かれたため、大筋は変わっていないようです。

 

ちょっと本を読んだ程度で天皇家について語るなどおこがましいのですが、今現在の国際情勢と照らし合わせると、明治時代に成立した皇室典範を順守していくのも難しいのではという印象を受けました。女帝に関しても歴史をさかのぼれば例がいくつも出てきますし、何より人権の問題もあると思います。

今だけにとらわれず、過去を見つめることで未来を考えていく必要があるのではないでしょうか。そのきっかけとして、この本を読めたことが良い勉強になりました。

 

歴史のなかの天皇 (岩波新書)

歴史のなかの天皇 (岩波新書)