備忘録的 本棚ブログ

読んだ本の感想や書評を備忘録的に書いていきます。本棚の様に積み上げていくつもりです。

反知性主義を克服するには「知性とは何か 佐藤優」

知性とは何か(祥伝社新書)

 

my本棚93冊目は当ブログおなじみ(?)作家で元外務省主任分析官の佐藤優さんの本です。

 

著者は日本の政治が急速に「反知性主義」化している事に対し危機感を持ち、知性を復権させる必要があるとこの本で主張しています。

著者が定義する「反知性主義」とは、実証性や客観性を軽視もしくは無視して、自分が欲するように世界を理解する態度というものです。自分に都合が良い物語の殻に籠るのが反知性主義者の特徴であり、合理的、客観的、実証的な討論を拒否する傾向があるとしています。

そして、反知性主義を克服し知性を復権させるには読書が必要だと著者は訴えています。さすが月300冊の本を読まれているだけはあります…!

 

さて、知性を復権させるには読書が必要だと前述しましたが、著者は論理的かつ実証的な言説を受け止める気構えが反知性主義者にはないと書いています。確かに読書を重んじるならば反知性主義者にはなり得ないでしょう。

SNSやネットメディアの普及により、書き言葉よりも話し言葉に接する機会が増えたようです。書き言葉が使えなくなってくると、読む力も衰えてしまいます。そこに反知性主義者の増加原因があるのかもしれません。

 著者は、話し言葉の様な文章を読み書きすることが習慣化されてしまうとコミュニケーション能力が低下してしまうと危惧しています。そして、自立的に思考することを求められる小説や哲学書、思想書が読まれなくなってきていることを嘆いています。

 

また、昨今の早期英語教育に対しても警鐘を鳴らしています。英語を母語としていない人が使用している共通語としての英語は、語彙数が少なく、文法も単純な傾向があるそうで、そういった言語を使っていると思考力が低下してしまうおそれがあるそうです。

小学校高学年位までに2ヶ国語を使える子供は、無意識的に言語を使い分けているため、片方の言語を使う必要がなくなるとその言語を忘れてしまうのだとか。反対に中学生以後、論理的思考が身についてから外国語を覚えると、大人になっても忘れてしまう事はないようです。

Googleの翻訳精度も高まってきている今、がむしゃらに言語を学ぶのも禁物だと言えそうですね。

 

私自身はまだまだとても知性があるといえない程度の読書量しか持ち合わせていませんが、胸を張ってそう言えることを目標に、これからも読書を続けていこうと思います~。

 

知性とは何か(祥伝社新書)

知性とは何か(祥伝社新書)