備忘録的 本棚ブログ

読んだ本の感想や書評を備忘録的に書いていきます。本棚の様に積み上げていくつもりです。

生きてくことに悩んだら「中村天風と『六然訓』 合田周平」を読んでみよう

中村天風と「六然訓」 変革を実現する哲学 (PHP新書)

 

my本棚87冊目は工学博士で電気通信大学学長顧問である合田周平さんによる、中村天風氏の解説書です。

中村天風氏は思想家・実業家で、若くして病気を患ったことから世界中を放浪し、心身の修行の末病気を克服した後にその思想を広め、京セラの創業者稲盛和夫さんといった多くの著名人から師事された方です。

 

著者の合田さんも中村天風氏に師事した一人です。東日本大震災を経て、国家や個人がどう生きていくべきなのかを、天風の思想から説いています。

スピリチュアルなものとして警戒される人もいるかも知れませんが、精神的な話といってもむしろ武士道の様な「心構え」について天風氏も合田さんも説かれているので、仕事や生活の上でとてもためになる知見かと思います。

 

<内容紹介>

中村天風にかつて師事したシステム工学の専門家による天風哲学解読の試み。「六然訓」は天風哲学を創建する転機になったといわれる中国の古典。その言葉をもとに、中村天風の人物像と思考と行動を考察していく。心の潜在意識にまで伝達され、意識内容をも書き換えることのできる持続可能な「意志の力」としてのヴィジョンを、国家や個人はいかにして持つことができるのか?生活や国のかたちを改革する未来へのシナリオとは?天風思想を日常生活の心身の調和に活かす心構えも説く。

 本のタイトルにもある「六然訓(りくぜんくん)」は中国の明の時代に崔銑(さいせん)という人が書いた古典の中に出てくる言葉です。この本も六章からなり、天風氏の名言が多数紹介されています。

 

ただ、天風氏の言葉だけでなく、著者の合田さんの深い人生経験からなる含蓄のある話が多数書かれているので、以下に引用します。

選択のチャンスに恵まれるには、個人的に独立し「一芸に秀でた達人」となることである。そのためには、社会の「自縛」から解放されることが第一義的な課題である。ここでの「一芸」には、「修証一等」の意味が込められている。<中略>プロ集団においても、「行」の実践とともに一つの芸事を習得することが重要で、ここで初めて「一芸に秀でた達人」が誕生する。さらに、「行」という方法や手段が、特殊なものでも禁欲的な事柄でもなく、日常的にいつどこでも実践可能なもので、そのまま自己の生命を活性化することが大切なのだ。この日常性が必要条件であり、気づくと「一芸に秀でた達人」にまで登りつめている。 

 私が要約してしまうと陳腐になってしまいますが、たゆまぬ努力の肝心さを説いてくれているのではないでしょうか。

 

一般には、現実社会の現状や自己の人生の今を「結果」と考えて、これを起点として過去に遡るプロセスを辿る。われわれがここにこうしている「現状」は、過去の何が原因でこの結果となっているかを特定するシナリオの獲得である。
この「遡るシナリオ」を、視点(始点)を変えて「未来」から「現在」を逆算するプロセスに置き換える。将来の自分が「こうありたい」という願望を「ヴィジョン」として掲げ、「これが結果だ」と自分の心に強く思念する。この「ヴィジョン」に生きることで、今日も生活の日々がその「原因」として構造化される。

 よく夢や目標を設定してそこから逆算して行動を決めていくというメソッドは聞きますが、以上に引用したような考え方をしたことはありませんでした。未来を「結果」と考え、今を「原因」とする。強引な感じはしますが、イメージさえ強く持てればこれに勝る夢の叶え方はないでしょう。

天風氏曰く、

「ヴィジョン」は、日本語の「言霊」ともいえる。言葉が活力を伴い、正しい精神のもと人生を思い通りに生きることを実現させる。

 とのことです。「引き寄せの法則」と似ているかも知れません。何か悩むことがあったときは、天風氏の言葉を思い出し、ヴィジョンを持って生きていきたいですね。

 

中村天風と「六然訓」 (PHP新書)

中村天風と「六然訓」 (PHP新書)

 

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