「俺の考え 本田宗一郎」が今読んでも学ぶポイント多すぎます
my本棚54冊目はHONDAの創業者、本田宗一郎のエッセイです。
刊行されたのは1963年(私が読んだのは新装版の文庫ですがそれでも発行は20年前!)とかなり古い本ですが、時を越えてなお読み継がれる一冊ではないでしょうか。
私がこの本を読んだきっかけは以前記事にあげた山口照美さんが座右の書と本の中で語っていたからです。
mybookshelf.hatenablog.com
歴史に残る名経営者の言葉には、やっぱり重みがありました。
私がこの本を読んで感銘を受けたのは、人間は信用とカネで成り立つという話です。
大抵は信用についてのみ語る人が多いと思いますが、さすが本田宗一郎は現実的な観点をお持ちです。
カネはもちろん生活の上で必要だけど、カネに重きを置くと信用が得られない。
だからまずは信用を得よ、カネは後からついてくると氏は主張します。
HONDAの場合はまず皆に納得してもらえるよい製品を作ることで信用を作ったとのことですが、信用を得るのに大事なのは約束を守る、相手にもうけさせる(世の中に奉仕する)ことだそうです。
それを長い時間心がけることで、雪だるま式に信用がたまり、 気づけばカネとなって返ってくるようです。
Giveの精神が大事とよくいいますが、正にそのことを語ってくれています。
また、読んでいて面白いのは今から半世紀前の時代背景を感じ取れることです。
本の中で何回か国鉄のサービスが良くないと不満を漏らしています。
全力で世の中に奉仕している氏からすれば、民間企業でないところからくるやる気のなさに憤りを感じるのでしょう。
反対に、時計から工作機械に至る世界一の精密工業を作り上げたスイスを見習えとも書かれています。
国鉄はJRに変わり私鉄と競争している一方、時計は日本のSEIKOがスイスを超えて世界一の技術を持っていますよね。
本田宗一郎やソニーの井深大が戦後の日本を牽引していた雰囲気が伝わってきます。
そして、タイトルが「俺の考え」というだけあり、主張が力強いですが、それでいて優しさも感じます。
徳川家康の伝記が巷で読まれていることに対し、多くの犠牲の上にたった英雄を見本にするなと切り捨てたり、孫子の兵法をその真理はともかく具体的には今更何の役に立つのかと疑問を投げ掛けたりしています。
しかしそれは人をいつも案じているからで、そのことは最後の城山三郎さんによる解説にも書かれています。
青山に自社ビルを建てる際、ビルのガラスが地震で割れても危なくないように、バルコニーをつけて受け止めるようにしてくれと注文したのだとか。
自身のことより世の中のことを考える、この姿勢が表れていますね。
本当にいい本はいつまでも色褪せないですね。ぜひ読んでみてください。
- 作者: 本田宗一郎
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1996/04/25
- メディア: 文庫
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